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環日本海学会設立趣意書*
科学技術の発達とともに地球は小さく感ぜられ、人間の生活を支える生産、流通、消費、廃棄物は一国の国境を越え、相互依存と相互協力とは避けて通れない課題となっている。 しかも、二つの世界大戦の後、半世紀にわたって世界を覆った冷戦構造も崩壊しつつある中で、世界各国、各地域において、国家のあり方が問われるとともに、効果的な交流・協力のあり方についての模索と実験が続けられている。環日本海交流圏形成の要請もこのような動きと軌を一にしている。 日本海及び日本海を囲繞する地域とそこに密接に関係を有する周辺地域、すなわち環日本海地域は、地理的近接性を持ちながら、冷戦構造の中では、東西対立のまさしく接点として、自由な往来を妨げられるとともに、「開発」から取り残されてきた。国際環境の変化につれて、この地域の有する潜在的可能性に対する認識が、一躍この地域に対する関心を呼ぶことになってきた。 しかし、日本の行った明治維新以来の脱亜入欧政策、侵略戦争・植民地支配、さらに冷戦構造下でとられた外交政策等は、対岸諸国・諸地域の人びととの間に意識と認識における隔たりと歪みを生んだことは否定できない。この歪みを正すとともに、この地域の発展と繁栄への協力のために、地域の一員としての役割を果たすためには、国際性、学際性をもつ学術研究の体制を整え、この地域の歴史と、現状に対する学術研究に寄与するとともに、未来に向けて科学的に政策提言を行い得る体制を整備することが必要であると考える。 植民地構造から冷戦構造に即座に転換してしまった東アジアにあって、日本が戦後処理を完遂しないままに、経済的成功をおさめ、既に国民の間には大国意識が芽生えている。こうした状況下において、一方では事実を究明し、被侵略国に対する戦後処理を誠実に行うとともに、他方で国民に対する歴史教育を徹底することが肝要であることは言うまでもない。 とりわけ環日本海地域にあって、その平和、協力、発展をはかるためには、各国民の歴史認識の共有が重要であり、そのためにも真実を追及し、未来を展望、検討、討議する学会が必要であると考える。 環日本海地域は世界の縮図である。言語・宗教の違い、生活文化の相違はもとより、地域別、階層別の経済的格差、政治的社会的権利、少数民族問題、民主主義の深化、地方自治、さらには大気汚染、河川・海洋汚染等生態系を含む自然環境汚染等人類の未来設計にとって、極めて重要な問題群を擁している。これらの問題群について、学問的に真摯に挑戦し、地域の平和、協力、発展をはかる「日本海方式」を生みだし、同様の間題を抱える世界の他の地域に向かって発信するため、国際的、学際的に創出される叡知と経験を交換し、情報を共有する学会が必要であると考える。 これまで、日本国内各地において、国際的な地域間交流を含め、環日本海研究のさまざまな学術的成果が蓄積されてきた。われわれは、今後これらの研究成果を基礎として、さらに一層の深化と発展を目指す全国的な学会の設立が必要であると考えるに至った。 われわれの目指す学会は、国際性、学際性を有し、人材育成型、地域還元型の学会として発足すべきであると考える。単に個別の研究者や研究者集団の学術成果を高めるためばかりでなく、学会そのものが国際的学際的共同研究に積極的に取り組み、国境を越えた地域の未来に向けて、広く人文科学、社会科学、自然科学における具体的な調査検討、将来計画の形成に対する地域政策の提言はもとより、国境を越えて地域更に地球全体の未来に向かって有用な人材育成に取り組み、世界の平和と発展のために寄与して行きたいと考える。 学会の名称、 特に「日本海」の呼称については、対岸から出されている問題提起を深刻に受け止め、長い討議を行った。われわれは、この問題は、学会においてまさしく真剣、慎重に検討されなければならない学会の重要研究課題であるとの認識に達した。それはまさしく国際的、学際的に検討されるべき課題である。したがって学会発足後研究会の主要論題の一つとなすべきものと考える。 1994年11月 (『環日本海研究』第1号、1995年)
* 2008年度会員総会(2007年12月)で学会名称を「北東アジア学会」に変更。 |
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